column ストラテジストコラム

データ分析は、マーケッター視点で

タイトルを聞いて、データ分析にきちんと対応されている方は「そんなの当たり前だろ?」とおっしゃるかもしれませんが、実は「分析は得意だけどマーケティングはあまり知らない」とか「マーケティングは長年やってきたけどデータ分析は苦手」という方が結構いるのでは?と感じています。
分析とマーケティング、これはセットになって初めて活きてきます。この連載では、これから益々重要になるデータ分析について、デジタル視点やブランディング、マーケティングの視点から考察していきます。

[ 第5回 ブランド評価と目指すべき分析の方向性 ]

今回は、現在および今後のマーケティングで最も重要であると考える「ブランド」の評価について、
そして、これまで考察してきた分析全体として、今後どのような方向を目指していけば良いのか?
を考察してみました。

(1)ブランド評価

これまで「顧客」「コミュニケーション」「施策」の各分析についてお話してきたのですが、最後は現在および今後も最も重要であると考える「ブランド」について、“どう評価されていくべきか?”お話します。

これまでは「自分達の活動を、自分達で分析する」という、いわゆる自己評価の観点だったわけですが、今回は「自分達のブランドが、社会や顧客から“どう評価されるべきか”」という他者評価の観点になる事がポイントです。

世の中には色々なブランド分析や調査があり、定期的に実施されることで、時系列的な傾向や各社比較が、同じ評価軸を使って行われているワケですが、今後はそれだけでは充分とはいえないのではないか?と考えています。

自社が他社と同じ調査・同じ評価軸で比較されると、相対的な参考にはなるのですが、その評価軸の内容は、非常に一般的な用語であり、汎用性も高いです。(例えば「信頼出来る」とか「高機能」とか)

しかし、モノや情報が氾濫し、経済や消費の仕方も大きな変革期にきており、社会における企業の存在意義の問われ方も強くなってきている中、企業にとって大事なのは、「自分達の企業ブランドは、どのような社会的価値を目指し、どのように思ってもらいたいか?」という意識を持つことが、非常に重要ではないでしょうか?

となると、そこには企業独自の個性が必要であり、一般的且つ汎用的な評価軸では、的確な評価に繫がらないのではないか?と思うのです。

つまり、一般的な調査を相対的比較として参考にしつつ、これに加え、自社独自の評価軸を使った評価をしてみる事が、非常に有効ではないかと思います。

分かりやすく言うと、「自社の企業ブランドにとって、最も重要な評価軸を決める」、「実際にそう評価されているかどうかを調べる」という事です。

そして、その評価軸とは、「=企業ブランドのメッセージ」に近い事がベストです。

例えば、
アップルならブランドのメッセージは「Think Different」。評価軸は、“他社とは違うことを考えているブランドか?“
コカコーラならブランドメッセージは「open happiness」。評価軸は、“幸せをもたらすブランドか?”
という具合です。

かつて、P&Gの元グローバルマーケティングの責任者であったジム・ステンゲルが著書「GROW(本当のブランド理念について語ろう ~「志の高さ」を成長に変えた世界のトップ企業50~)」で、「ブランドと収益の相関」について、以下の図のように記しています。

ブランドと収益の相関

また、以前ニールセンが、「ブランドエクイティとシェアは相関する」という調査結果を発表しました。

ブランド・エクイティとシェアの相関

昨今の、日本におけるマーケティングコミュニケーションは、“短期視点の販売促進”に比重を置きすぎていると懸念していますが、本来のマーケティングコミュニケーションは、「好きになってもらう」→「買ってもらう」という手順が必須です。
長期的視点のブランディングは、企業の持続的成長に繫がるはずで、そのブランドを「どう評価してもらいたいか?」
「実際、どう評価されているか?」が、分析全体の中の基盤になるという事は、必ず押さえておくべきと思います。

そして企業のマーケティングコミュ二ケーション活動としては、

・その評価軸を上げる事が最重要になる
・評価と事業成績の相関を長期に測る

という事が大事になると思いますので、分析においても是非「ブランド評価」を最重要テーマとして頂きたいと思います。

今後、時代が更に複雑化していくほど、長期的・本質的には、企業の「ブランド評価」と「事業成績」は必ず相関していくでしょう。



(2)目指すべき分析の方向性

いよいよ基本編も最後です。

これまで「顧客」「コミュニケーション」「施策」「ブランド」について、考察してきましたが、各分析テーマとポイントを以下にまとめました。
宜しければ、貴社分析のチェックポイントとして、ご活用頂けると嬉しいです。

各分析のポイント


また、最後のコーナーは、企業は今後、『分析に関しどのような方向やレベルを目指せば良いのか?』についてお話したいと思います。

例えば、分析力のステップという観点では、以下が参考になると思います。

分析力のステップ

分析力のステップとして、ここでは上下に「調査・報告」「分析」と分かれていますが、少なくとも「分析」の一番下のステップ「原因は何か?」は押さえておかないとイザという時、企業の死活問題になりかねません。

その上の、「今後もこれが続くのか?」「次に何が起きるのか?」「何がおきるのがベストか?」は、レベルが上がっていくにつれて、分析力は勿論ですが、企業の洞察力・予知力といったものも、より重要になってきます。
数値だけで、重要な物事が判断出来るのであれば、今後はAIがあれば人間は必要ないわけで、「数値x人間の経験値・洞察力・予知力」が大事であり、数値や分析だけでは見えない部分で、人間の能力が重要になっています。

「分析や数値」と「人間の見解」の関係で言えば、「人間の仮説を、数値でも確認・検証する」「数値を元に、数値だけでは出ないその時の企業にとってのベターあるいはベストな決断を人間がする」というように、あくまで「人間が主、データは従」である事は、忘れないで頂きたいと思います。

これから世の中の変化が更に加速する中、過去のデータでは予測や判断が出来ないことが、沢山出てくると思います。その時、人間しか出来ない能力を如何に磨いておくかが必須になるでしょう。

また『どのレベルの企業を目指すか?』という観点は、以下をご参考ください。

どのレベルの企業を目指すか

日本の企業は、欧米と比較すると分析が弱い傾向がある印象もあります。日本の企業の中で、分析に強い企業でも、「属人的に強い人がいる」というだけで、この図の「③分析力の組織的な強化に取り組み企業」というレベルになると、まだあまり多くないのではないでしょうか?

世の中のデジタル化は、今後更に普及し、企業と消費者の様々な接点がデジタル化されていく程、その情報もデータ化が可能になり、分析力の強化が益々求められていきます。
その為、今後はやはり「⑤分析力を武器とする企業」というレベルを目指すべきと思います。

そして、ここでも大事なのは、「分析」というものはデータだけではなく、「人間の洞察力や予知力・決断力など主とし、データを従とした分析力」です。お忘れなく。


さて、基本編はこれが最後になります。
タイトル「データ分析は、マーケッター視点で」とあるように、この5回を通じ、マーケティングとデータ分析の連携の重要性を感じて頂けたら嬉しいです。

また、内容は自分が実践したり、関わってきたものですから、決して難しいものではありません。
このメルマガやコラムを読んでくださったみなさんには是非、実践頂きたいと思います。





基本編に最後までお付合い頂き、誠にありがとうございました。

次は別の企画を検討中です。
詳細決まりましたら告知させて頂きますので、それまでお楽しみに。

[ 筆者紹介 ]

  • 山崎 浩人
    広告会社でマス広告、コールセンターでCRMを手がけ、携帯事業者でキャリアレップCEO、電通・CCI出資のクロスメディア事業CEOを勤めた。

    その後、外資広告社で企業のブランド戦略やグローバル戦略を支援。現在も戦略系コンサルを担う。

    ・2012年 日本広告主協会Web広告研究会「Web人 of the year」受賞
    ・講演例:「反グローバリズム時代の企業成長とブランド理念」
     https://www.is-assoc.co.jp/seminar20160120/