CCI田口です。今回はGA4で追加された「エンゲージメント時間」について、指標の定義や検証方法について解説します。Webサイト滞在時間を検証する場合、GA4では関連する指標が複数存在するため、それらの指標についても触れていきます。
GA4のエンゲージメント時間の定義に入る前に、まずはユニバーサルアナリティクスにおける時間絡みの指標について説明します。ユニバーサルアナリティクスの時間絡みの指標としては「平均セッション時間」と「平均ページ滞在時間」が用意されていました。そして、指標の定義は以下の様になっていました。
※補足:実際には秒単位で記録されますが、分かりやすくするために分単位で作成
つまり、「ページ滞在時間が0分」というデータは基本として発生しません。
以上の様に、ユニバーサルアナリティクスには、滞在時間に関連する指標は2点あり、それぞれ定義の違いがありました。この点がGA4からはどの様に変わったのか、説明します。
上記で触れたユニバーサルアナリティクス時代の指標名は、GA4では存在しません。また、指標の名称が変わっただけではなく、定義も変更されています。以下から1点ずつ説明していきます。
GA4では新たに「エンゲージメント時間」という指標が追加されています。意味としては、ユーザーがアプリやウェブサイト上でアクティブに過ごす時間と定義されています。
このアクティブとはどういう状態なのかを図で表したものが、下記になります。
以上の様に、GA4のエンゲージメント時間は、ブラウザのタブ(あるいはスマートフォンのスクリーン)が非アクティブであった場合は計測しない仕組みが採用されています。
例えば、ブラウザで複数のタブを開いた状態になっており、対象ページがアクティブなタブで表示されていなかった場合は、滞在時間は記録されない状態となります。
このため、「ページがアクティブとなっていた時間」のみが計測対象となるため、より精緻にページ閲覧時間が記録されることになります。
そして、このエンゲージメント時間を基にして、GA4では「平均エンゲージメント時間」と「セッション当たりの平均エンゲージメント時間」という指標が用意されています。
まず、平均エンゲージメント時間の計算式は、Googleヘルプページでは、以下のように定義されています。
平均エンゲージメント時間 =(すべてのセッションでウェブサイトがフォーカス状態にあったか、アプリがフォアグラウンド表示されていた合計時間)÷(アクティブ ユーザーの合計数)
Googleヘルプページより
ここで一点注意が必要な点があります。これまでユニバーサルアナリティクスでは、セッションごとの滞在時間を検証するケースが多くありました。その背景としては、広告施策に代表されるように、広告経由でWebサイトに訪問した場合、そのセッションでのサイト滞在時間を確認することで効果比較を行うケースが多かったためです。
ただ、「平均エンゲージメント時間」はセッションごとには確認できない仕様となっています。この背景として、この指標では計算式の分子は「すべてのセッション」が対象、分母はアクティブユーザー数が対象となっており、セッション単位で計算されていないから、となります。実際、探索レポートでセッションに伴うディメンション(例:「セッションの参照元」など)を選択していた場合、平均エンゲージメント時間の指標は選択不可となります。
そのため、GA4では平均エンゲージメント時間と別に、「セッションあたりの平均エンゲージメント時間」という指標が用意されています。この指標の計算式は、Googleヘルプページを確認すると、以下の様になっています。
セッションあたりの平均エンゲージメント時間 =(ウェブサイトがユーザーのブラウザでフォーカス状態にあった平均時間、またはアプリがユーザーのデバイスでフォアグラウンド表示されていた平均時間)÷(セッションの合計数)
Googleヘルプページより
セッション単位で検証したい場合は、この指標を利用することになります。探索レポートでセッション系のディメンションを選択していた場合でも、この指標は選択することが可能です。
そしてGA4ではもう一つ、滞在時間に関する指標が用意されています。それが「平均セッション継続時間」です。この指標は、ユニバーサルアナリティクスの「平均サイト滞在時間」と同一の定義と認識して問題ありません。
[GA4] 平均セッション継続時間は、すべてのエンゲージメント セッションの合計滞在時間(秒)をセッション数で割った値です。
ただ留意する点として、GA4ではセッションの定義がユニバーサルアナリティクスと異なるので、ユニバーサルアナリティクスと数字を比較すると差が生まれます。
アナリティクスでは、ユーザーがアプリをフォアグラウンドで開くか、現在アクティブなセッションがないとき(以前のセッションがタイムアウトした場合など)にページまたはスクリーンを表示すると、セッションが開始されます。
つまりGA4のセッションは入口ページがアクティブにならないとカウントが発生しません。
例外的なケースになりそうですが、別タブでいったんWebサイトを開いていた場合、そのタブをアクティブにしないとGA4ではセッションとしてカウントされません。
そしてGA4では、閲覧最後のページの場合、あるいは入口ページで直帰しており、入口ページが閲覧最後のページとなった場合でも、該当ページでエンゲージメントが発生したら、そのタイミングまでは滞在時間が取得できます。
ユニバーサルアナリティクスでは最後のページ、あるいは入口ページで直帰した場合は滞在時間はゼロ秒となっていたため、GA4の平均セッション継続時間は、ユニバーサルアナリティクス時代の平均サイト滞在時間と比較すると、数字が長くなっている可能性が高いです。
これまでエンゲージメント時間について解説してきましたが、ここで留意点を一点ご案内します。GA4では「エンゲージメントのあったセッション」という指標も存在します。この指標のカウント定義は以下の通りです。
この通り、この指標は全セッション数のうち、何らかの価値が発生した際にカウントされる仕組みを持っています。
ただし、エンゲージメント時間は、あくまでウェブサイト(あるいはアプリのスクリーン)のアクティブな時間を記録する指標です。お互いにエンゲージメントというワードが含まれるため、これらの指標は関係性があると誤認しやすいですが、結論としてはGA4のエンゲージメント時間算出に関しては「エンゲージメントのあったセッション」は計算式には利用されていません。
では実際にGA4のデータでセッションごとのWebサイトの滞在時間を確認する場合、どちらの指標を活用すべきなのかを考えてみます。
まずは実際の指標ごとのデータの違いを、本コラム記事ページごとに確認してみます。
前述と重複しますが、それぞれの指標で用いられている計算式が全く異なるためです。
セッションあたりの平均エンゲージメント時間 =(ウェブサイトがユーザーのブラウザでフォーカス状態にあった平均時間、またはアプリがユーザーのデバイスでフォアグラウンド表示されていた平均時間)÷(セッションの合計数)
[GA4] 平均セッション継続時間は、すべてのエンゲージメント セッションの合計滞在時間(秒)をセッション数で割った値です。
ただ、前者に関しては「実際にアクティブとなっていた時間」が採用されているため、より精緻な滞在時間が確認できる指標と言えます。ユニバーサルアナリティクス時代の数値と比較を必要としないのであれば、セッションあたりの平均エンゲージメント時間を検証時には利用すると良いと考えられます。
最後になりますが、ページ単位の「セッションの平均エンゲージメント時間」の使い分けについても触れていきます。
実はGA4ではセッションの定義が変わっており、ディメンションで「ランディングページ」と「ページ(「ページロケーション」、「ページパスとスクリーンクラス」など)」をそれぞれ組み合わせると、異なる結果が表示されます。
まず前者の場合ですが、ランディングページがこのページだった場合のアクティブなサイト滞在時間、という意味合いになります。
対して後者の場合は、対象ページのアクティブな滞在時間となります。
そのため、後者の方が同じページでも時間が短くなります(前者の場合、次ページ以降の滞在時間も反映されるため)。
なお、後者のケースのセッションですが、ユニバーサルアナリティクス時代の「ページ別訪問数」と同様の定義になります。
今回はエンゲージメント時間について、詳しく解説を行いました。GA4では現状でも新しいディメンションや新しい指標が追加されることがあり、データを検証する際にはどのディメンション、どの指標を組み合わせるべきなのか定義を理解していく必要があります。
CCIでは2020年のGA4登場以降、多くのお客様にGA4の導入支援及び運用支援を行っております。これらの実績から蓄積した知見を活かし、お客様が実現したい姿や現状課題の解消を現在も支援しています。
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