column ストラテジストコラム

データ分析は、マーケッター視点で

タイトルを聞いて、データ分析にきちんと対応されている方は「そんなの当たり前だろ?」とおっしゃるかもしれませんが、実は「分析は得意だけどマーケティングはあまり知らない」とか「マーケティングは長年やってきたけどデータ分析は苦手」という方が結構いるのでは?と感じています。
分析とマーケティング、これはセットになって初めて活きてきます。この連載では、これから益々重要になるデータ分析について、デジタル視点やブランディング、マーケティングの視点から考察していきます。

[ 第2回 顧客分析のポイント ]

今回からは、実際の分析内容について考察していきます。

まずは、データ分析の中で最も重要と思われる「顧客分析」の
ポイントについて、以下の3点から考察します。

(1)属性からインサイトへ

顧客データというと、どんな内容を思い浮かべますか?
「性別」「年齢」「住所」・・といった属性情報が一般的かと思います。
これはこれで重要なのですが、前回もお伝えしたように、今の顧客の消費行動は、「個々の価値観による」(マーケティング3.0)、更には「自己実現の欲求による」(マーケティング4.0)と言われており、属性以上にその顧客のインサイトが重要になってきます。

では、そのインサイトはどうやって測るのか?一般的には、モニターを活用した定量調査・定性調査があります。
定量調査では傾向を把握する上で重要ですが、漠然とした設計ではヒントは見いだせません。
重要なのは、調査設計をする段階で、「何に対する」「どんな価値観を」探りたいか?という狙いがハッキリしていることです。

しかし、定量調査で分かるのは、インサイトのクラスタ分類が出来るところまででしょう。
おそらく各クラスタの“本当のホンネ“は見えづらく、次に各クラスタからターゲットとなるクラスタを選択した定性調査(少数のモニターを対象したインタビュー)が有効になってきます。
そして、クラスタを選択する判断基準には、そのブランドが「どんな価値観を提供したいと思っているか?」というブランド側の戦略(仮説でも可)があって選択する事が可能になります。

そして、調査と戦略がシームレスに連動しインサイトが見えてくると、その次の施策の方向性も見出しやすくなります。
しかし実際には「調査」「戦略」「施策」を担当する部門が別々で、企業としてシームレスな?がりを欠いているケースもよく見受けられます。これは非常に勿体無いなと感じてしまいますね。

属性からインサイトへ



(2)データの多様化:接点の実績が全てデータ化されていく。

また、顧客の何を獲得するのか?マーケティングのパーチェスファネルにおいて、“まず最初に獲得すべきは「広いリーチ」である”という事は、これまでは疑いの無い王道路線でした。
しかし、この考えはバブル前までの高度経済成長における「作れば売れる」「知られれば売れる」という環境を前提にしたものです。
現在は、モノも情報も溢れる時代。そんな中、「大量の予算を投入すれば、広いリーチが獲得でき、それが売上に直結する」とは限らないと考えたほうが良いと思います。

では、これからは、顧客の何を獲得すれば良いのか?それは、「そのブランドの本当のファンを発掘し、そのファンの共感を獲得する」事が最重要と考えます。つまり量(リーチ)から質(共感)への転換です。

私が外資の広告会社に在籍していた時、聞いた調査事例ですが、SNSにおいて、各ブランドに対するファンは、「Freeloader(ただ記事を見ているだけ)「Newscaster(シェアしてくれる)」「Influencer(推奨してくれる)」と分類され、Influencerは全体の1.5%しかいない、という結果が出ていました。
これだけ見えると「そんな少数のファンだけ対象にしていたら、ビジネスインパクトが小さすぎるのではないか?」と思われると思います。

しかし、もう一つの調査で、「売上単価の高い顧客A」と「売上単価がAほど高くない(Aの約7割)顧客B」の顧客価値を、「ブランドスイッチャーか否か?」「その顧客のSNSにおける拡散力」「ブランドの価値創造への協力度合い」で2人の顧客価値を測定したところ、顧客Bの価値が顧客Aの約30倍に大逆転する測定がされました。

つまり、全体の1.5%しかいないInfluencerとの関係にリソースを注力すると約30倍の45%の価値がうまれる、という事が単純計算上ではありますが、想定出来ます。
こうなると、担当者は勿論、経営層も「そのInfluencerにリソースを注力する事が、最も効率的かつ効果的かもしれない」と感じるのではないでしょうか?

これだけSNSが普及し、消費者は「企業からの情報」より「友人からの情報」に信頼を置きます。
企業の力だけでリーチするのではなく、まずは、「そのブランドファンの深い共感を獲得」し、「そのファンの拡散力を活用してリーチを得る」方が、現在のコミュニケーション環境に適している、とは感じませんか?

少し話がコミュニケーション手法の方に振れますが、この共感を核とするアプローチについてご紹介します。
私が在籍していた外資の広告会社では、このアプローチを「fuel」と呼んでいました。「fuelの意味は「燃料」ですが、意味合いとしては、「色々な所に、燃料を注ぎ小さな火(共感)を炊いて、やがて大きな火にしていく」というものです。

その広告会社の世界的に有名な作品であるユニリーバの「Dove Real Beauty Sketches」(6800万回を超える視聴数!)や、私がその広告会社に在籍中お手伝いさせて頂いた日本自動車メーカー8社共同プロジェクト「Drive Japan」の「Drive Heartキャンペーン」(2012年 日本広告主協会Web広告研究会「Web人 of the year」受賞作品)や世界160カ国以上で視聴されたコニカミノルタの「dream printer」は、このアプローチを取り入れています。
是非、下記より動画をご覧になってみてください。

・ユニリーバ「Dove Real Beauty Sketches」
https://www.youtube.com/watch?v=XpaOjMXyJGk


・コニカミノルタ「dream printer」
https://www.youtube.com/watch?v=EVw_wWTbVfE

広いリーチより深い共感へ



(3)商品ファンから企業ファンへ

これまでの日本企業のコミュニケーション予算は、「企業コミュ二ケーション」より「商品コミュニケーション」に圧倒的に予算が配分されています。しかし、モノや情報があふれ、消費者インサイトは、以前の「個人の為の消費欲求」より「他人との?がり」や「社会貢献」に軸が移ってきています。
となると、消費者の選択基準は、「どんな商品か?」だけでなく「どんな企業の商品か?」という事も重要になってきます。

ある企業の顧客ロイヤリティ調査によると、最初は「製品に対するロイヤリティ」と「行動(製品の購入)」ロイヤリティ」の2軸で、分析・評価をしていたところ、ロイヤリティの高いはずの顧客に、何故か突然ブランドスイッチされてしまったそうです。
これは、競合がより安い商品を出した等が理由だったの様ですが、ロイヤリティが高いと思っていた顧客は、実は「単に安いから買っていただけ」という仮説が生まれました。

そこで、調査に「社会(その企業自体の)ロイヤリティ」という軸を加えたところ、その軸で高いロイヤリティを示す顧客は、競合がより安い商品を出しても、あまりブランドスィッチがされない」という傾向が出たため、以降のコミュニケーションは「社会(その企業自体の)ロイヤリティ」を重要視したところ、CRM施策として非常に高い成果をあげたとの事です。

社会における企業の存在意義や、情報化社会における企業情報や広告の受け止められ方は、年々シビアになっています。
日頃から、企業ファンを基盤とし、その上で商品ファンを創っていく、という構造は、今後、より重要になっていくと思われます。

商品ファンから企業ファンへ



次回第3回では、「コミュニケーション設計」について考察します。

[ 筆者紹介 ]

  • 山崎 浩人
    広告会社でマス広告、コールセンターでCRMを手がけ、携帯事業者でキャリアレップCEO、電通・CCI出資のクロスメディア事業CEOを勤めた。

    その後、外資広告社で企業のブランド戦略やグローバル戦略を支援。現在も戦略系コンサルを担う。

    ・2012年 日本広告主協会Web広告研究会「Web人 of the year」受賞
    ・講演例:「反グローバリズム時代の企業成長とブランド理念」
     https://www.is-assoc.co.jp/seminar20160120/