column ストラテジストコラム

データ分析は、マーケッター視点で

タイトルを聞いて、データ分析にきちんと対応されている方は「そんなの当たり前だろ?」とおっしゃるかもしれませんが、実は「分析は得意だけどマーケティングはあまり知らない」とか「マーケティングは長年やってきたけどデータ分析は苦手」という方が結構いるのでは?と感じています。
分析とマーケティング、これはセットになって初めて活きてきます。この連載では、これから益々重要になるデータ分析について、デジタル視点やブランディング、マーケティングの視点から考察していきます。

[ 第3回 コミュニケーション設計 ]

今回は、データ分析の基盤にもなっていく「コミュニケーション設計」についてです。

以下の3点から考察していきます。

(1)コミュニケーションの全体設計

全体設計おいては、まず土台となるフレームが必要になりますが、一般的にはやはりそのコミュニケーション・プロセスをパーチェスファネルを使って設計するのが良いと思います。

ただし、そのプロセス自体は時流によって変化していきます。
かつては「AIDOMA」(*「注意/Attention → 関心/Interest → 欲求/Desire → 記憶/Memory → 行動/Action」)が主流でしたが、インターネットでの検索やソーシャルメディアが台頭してきた以降は、「AISAS」「DUAL AISAS」等という考えも出てきました。
このプロセスは、今ではコミュニケーション構造が複雑化している為、「360°コミュニケーション」という考えもある位ですから、あまり決めつけすぎない方が良いとは思います。
そして、これをカスタマージャーにし、各プロセスにインサイトや心理変容を想定していく、という事になります。

カスタマージャーニーも、どこまで細かく設計するかにもよりますが、私自身はまずはシンプルな設計をする事をお奨めします。

例えば図のような例があります。

コミュニケーション・プロセス

顧客は、個別キャンペーンの場合、主ターゲットを「潜在層か」「顕在層か」「既存顧客か」に絞るかもしれませんが、まずはそれらを全て含む“全体設計“を設定した方が良いと思います。

・まず、スタートとして、ブランドに対する各ターゲットの現在のインサイトを想定。
   ↓
・次に、その各ターゲットとコミュニケーションをした結果、「どんな心理変容・態度変容に導きたいか?」というゴールを設定します。
   ↓
・そして、スタートとゴールの間のプロセスを設計。
   ↓
・最後に、各ターゲットの各プロセスで、最適なコンタクトポイントは何か?を想定します。

これが、コミュニケーション全体の仮説設定になります。可能であれば、各プロセスでの通過率も仮説を立てておくと良いでしょう。

分析においては、コミュニケーション施策を実施した結果、「その各ターゲットと各プロセスの通過率が、仮説と比較してどう違ったか?」を検証します。
そして、そのブランド・コミュニケーションにとって、最大の課題はどのプロセスにあったのか?を導き出すのです。

以降は、その課題に対する改善策を施した次のコミュニケーション施策を実施し、また検証をする。
その繰り返しですね。

それによって、そのブランドの最適なコミュニケーション施策に近づいていくわけです。



(2)コミュニケーション分析

分析においては、2つのアプローチがあります。「プロセス分析」と「関係性分析」です。

「プロセス分析」は、上記の様に、そのプロセス順の通過率を分析するもので、ネット中心のコミュニケーションの場合、ブランドサイトやキャンペーンサイトを軸に、比較的実施しやすいと思われます。
しかし、もう一つの「関係性分析」は、もっと複雑で、分析も難易度が高いです。これは、「コミュニケーション・プロセスが、必ずしもブランド側で設計した順番にはならない」という前提に立っています。

みなさんも、一消費者として考えて頂ければ分かると思いますが、あるブランドとの最初の接点は、ネットだったり、店舗だったりする場合もあるわけで、必ずしもテレビとは限らないですよね。
今は、高度経済成長期の様に、「TVCMを打って、店舗面積を確保してキャンペーンをすれば、売上は上がる」という時代ではありません。インターネットや検索、ソーシャルメディア、デジタルメディアの普及もあり、その順番は非常に複雑です。
この関係性分析は、「各施策と売上の関係性」「各施策同士の関係性」を分析することで、“有効なプロセスを後から導き出す”という事になります。

コミュニケーション分析

ただし、この場合は、テレビの広告費・露出時間、インターネットの広告費・検索量・発言量、店舗面積、等、様々なデータが必用で、且つその中にはデータ自体の入手が困難な為、各データを入手する為の様々な協力者が必要となります。



(3)マーケッターとサイエンティストの連携

上記、コミュニケーションの設計と分析を実施する際に、忘れがちなのが「マーケッターとサイエンティストの連携」です。

これは、この連載タイトルが「データ分析は、マーケッター視点で」としている事からもお分かりの通り、連載の核になる部分もあります。

「連携」といっても、現実によく聞く話としては、「マーケッターが仮説や目的ナシに、サイエンティストへデータ分析を依頼する」「サイエンティストがマーケティング視点なく、分析してしまう」というパターンです。
マーケッターやサイエンティスト、どちらにも役割があるわけで、どちらか一方だけでは、有効な分析を実施する事は難しいです。(勿論、両方の視点やスキルをお持ちの方もいらっしゃいますが)

では、どう連携するか?

下記の図をご覧ください。

マーケッターとサイエンティストの連携

お分かりのように、「マーケッターは仮説を立てたら終わり」「サイエンティストはデータもらったら、後は分析するのみ」という事ではありません。
「目標設定」から「今後の目標・課題」にいきつくプロセスにおいて、何度かのやりとりが必要になります。

・まずは、そもそもの「目標」とそれに対する「課題」、課題に対する「施策」があって、コミュニケーションの全体が設計されます。
   ↓
・これを受け、サイエンティストは「どんな分析が有効か?」「その為には、どんなデータが必要か?」を提言します。
   ↓
・更にマーケッターはこれを実施する為、施策に対し、データが取得出来る環境を用意しなくてはなりません。
 それは、ユーザーの認証であったり、タグの設置であったり、アンケートにおける質問項目だったり、いくつかの方法があるでしょう。
 施策を実施したものの、「そもそも、そんなデータは取れない」とか「データは取ったけど、全然有効なものではない」となると、元も子もありませんよね。
   ↓
・そして、必要かつ有効なデータが取れて、初めてサイエンティストは分析が出来るわけです。
   ↓
・最後は「最初に立てた目標を達成出来たのか?」という考察があり、更には「今後の目標」「新たに見えてきた課題」に向かい、又次の施策の向かうのです。

マーケッターと分析者、それぞれが役目を果たし、それぞれが有機的に連携する。
これは、データ活用で成功していく為の、必須条件だと思いますが、貴社では如何ですか?



さて、次回第4回では、「施策効果」に入っていきます。

どんなアウトプットを目指せば良いのか?
例を使ってお話していくますので、お楽しみに。

[ 筆者紹介 ]

  • 山崎 浩人
    広告会社でマス広告、コールセンターでCRMを手がけ、携帯事業者でキャリアレップCEO、電通・CCI出資のクロスメディア事業CEOを勤めた。

    その後、外資広告社で企業のブランド戦略やグローバル戦略を支援。現在も戦略系コンサルを担う。

    ・2012年 日本広告主協会Web広告研究会「Web人 of the year」受賞
    ・講演例:「反グローバリズム時代の企業成長とブランド理念」
     https://www.is-assoc.co.jp/seminar20160120/