column ストラテジストコラム

データ分析は、マーケッター視点で

タイトルを聞いて、データ分析にきちんと対応されている方は「そんなの当たり前だろ?」とおっしゃるかもしれませんが、実は「分析は得意だけどマーケティングはあまり知らない」とか「マーケティングは長年やってきたけどデータ分析は苦手」という方が結構いるのでは?と感じています。
分析とマーケティング、これはセットになって初めて活きてきます。この連載では、これから益々重要になるデータ分析について、デジタル視点やブランディング、マーケティングの視点から考察していきます。

[ 第4回 施策効果 ]

今回は、データ分析のアウトプットの中でも特に重要となる「施策効果」についてです。

以下の3点から考察していきます。

(1)MMM(マーケティング・ミックス・モデル)

施策効果といっても色々ありますが、まず単体の施策効果を図るのであれば、ネットの世界では比較的簡単ですよね。
広告バナーであれば表示数やクリック、サイト誘引であればPVであるとか、ブランディングであればサイト滞在時間等、販促であればコンバージョン(申込み数や売上等)。

しかし、TV等のマスメディアでは、その直接的効果は図る事自体に構造的限界があり、更にマスメディアとネットを組み合わせた施策ですと、その中のどの施策が結果全体にどれ位貢献したか?は非常に分かりづらい。

これを解決する分析手法が、従来からある解析手法のMMM(マーケティング・ミックス・モデル)です。
以下の図の様な計算式になります。

マーケティング・ミックス・モデル

売上を目的変数とし、各施策のコストが、どの位売上に貢献したかを分析していくものです。

解析自体は、従来からある王道なもので、昔はエクセルでガリガリやったものですが(笑)、今は便利な分析ツールも多く操作等のインターフェースは簡易でも、裏側で動いている解析は、こういったモデルが働いているのではないかと思います。

必要なデータとしては、広告費といった手に入りやすいものから、流通にかけたコスト等なかなか入手出来ないものまであり、会社によっては様々な部署の担当者の協力が必要になると思われます。

ただし、“入手したデータが全て活かされるは限らない”という事はご注意ください。
このMMMで、解析一発で解が出るほど、実際は簡単ではありません。

様々なパターンを出してみて、何か解を出すにはイレギュラーな要素が考えられるデータが出てくるケースもあり、その場合はそのデータは分析対象から除きます。
いわゆるデータスクリー二ング的に、入手したデータの中から有効そうなデータを選択していくという作業が必要になり、そのデータが決まったら、本格的な解析に入るワケです。



(2)施策の効果測定

次に実際に解析した結果の例が、図となります。

施策効果測定

このケース、元々は「あるキャンペーンにデジタルを加えた為、これまでよりどれ位効果があがったのか?」を解析する、とうのがテーマでした。

実際、キャンペーンにおいてはデジタルを入れる前より効果はかなり上がったのですが、それ以上に重要な話として、「そのキャンペーン全体が、売上にどの位貢献したのか?」あるいは、「そのキャンペーン以外の他の施策は、売上にどの位貢献したのか?」を見てみると、実は最も大きな影響を与えたのが、棒グラフの一番下「ベースライン」という事が分かりました。

このベースラインというのは、MMMでいう「定数項」、いわゆる「ブランド力」を意味しています。

つまり、色々キャンペーンを仕掛ける事は大事なのですが、それ以前に、「そもそもそのブランド自体の影響力がどれ位あるのか?」という事が、売上全体に最も影響している、という事が分かったのです。

そして、次に影響が大きかったのが、流通施策、更にその次がキャンペーン施策でした。

この解析はある一定期間の解析ですが、ここから想定される事として、もしかしたら「このブランドは、長年に渡りその影響力がじわじわ低下していたのでは?」という事が考えられます。
これは、そのクライアントさんの経営者が「昔はみんな、自社のブランドの事をよく知ってくれていたが、最近はあまり知られていないと感じる」というコメントをしていた事とも一致します。

つまり、キャンペーン担当者が、そのキャンペーンだけでなんとか売上を上げようと頑張っていても、その“土台となるブランド力”がじりじりと下がっていては、「なかなかキャンペーンだけで売上全体に貢献する事は難しいのではないか?」という事が考えられます。
となると、その企業の根本的な課題は“ブランド力の向上”であった事も見えてきますよね。

このように、売上全体が、施策別にどれ位効果があったのかを解析する事で、分析においても又次のテーマが見えてきます。
そう、「ではどの施策にどの位の予算を配分すれば、売上が最も上がるのか?」というテーマです。



(3)予算最適配分のシミュレーション

この予算最適配分シミュレーションは、特に経営にとって重要なポイントになります。
又、施策ごとの各担当にとっては、自分の仕事の予算に影響する事になるので、非常に気になるものになるでしょう。

このケースの場合は、テレビとネットの最適配分をシミュレーションしたものです。

予算最適配分のシミュレーション

既に「テレビは効果がないのでは?」と言う意見も出ている時の事でしたが、実際にはテレビは必要で、「テレビ0%:ネット100%」(折れ線グラフの一番右)にすると、途端に売上が激減するのがグラフから明らかです。

つまり「テレビかネットか」という事ではなく、「テレビとネットで、どう予算を配分するべきか」という観点が重要になります。

このシミュレーションにより、次回の予算配分を、従来の「昨年までの配分をベースに考える」といった慣習的なものから「施策の効果ベースに考える」という根拠あるものにシフトする事が出来ます。

ただし注意してほしいのは、“これは一つのキャンペーン結果でしかない”という事です。
業界によってノーム値があるというわけでもなく、あくまで各企業がこういった解析やシミュレーションを積み重ねる事で、その企業なりの“係数や解の精度“が上がっていくのだと思います。
あくまで解析結果は参考数値。絶対視はせず、当然マーケッターや経営者のこれまの経験による考察要素も含めて、総合的な判断をしていく事が重要と考えます。

更には分析以前に、「企業のマーケティングコミュニケーション活動が、世の中の動向とマッチしているか?」という視点も重要です。
最近のある調査によると、「生活者のメディア接触時間におけるデジタルのシェアが、初の過半数を超えた」ようですね。
貴社のマーケティングコミュニケーション活動は、生活者の変化にきちんとついていけていますか?



さて、次回第5回は、基本編の最終回「データ分析における企業の目指すべき方向とは?」です。

どのレベルにどんなステップを進めばよいのか?といいたお話をしたいと思います。お楽しみに。

[ 筆者紹介 ]

  • 山崎 浩人
    広告会社でマス広告、コールセンターでCRMを手がけ、携帯事業者でキャリアレップCEO、電通・CCI出資のクロスメディア事業CEOを勤めた。

    その後、外資広告社で企業のブランド戦略やグローバル戦略を支援。現在も戦略系コンサルを担う。

    ・2012年 日本広告主協会Web広告研究会「Web人 of the year」受賞
    ・講演例:「反グローバリズム時代の企業成長とブランド理念」
     https://www.is-assoc.co.jp/seminar20160120/